公開: 2026-07-07|良品チェッカー編集
結論から言うと、『5ATMやIP68の防水だから、お風呂や温泉でも安心して使える』という理解はかなり危険です。これらの等級は水泳や雨・水しぶきを想定したもので、多くのメーカーがサウナ・高温の湯・石鹸や入浴剤の混じった水を明確に『保証対象外』または『避けるべき使い方』として案内しています。
ややこしいのは、故障しても『防水等級はあるのに壊れた』と主張しにくい点です。防水試験の前提(常温・静止・淡水)を外れた使い方は、そもそも等級が保証している範囲の外だからです。
この記事では、5ATMとIP68が何を意味しどう違うのか、なぜお風呂・温泉・サウナが想定外なのか、そして『それでも水回りで使いたいなら何を基準に選ぶか』を、断定を避けつつ正直に整理します。防水の可否は機種・世代で細かく異なるため、最終判断は必ずご自身の機種の公式案内で確認してください。
まず押さえたいのは、スマートウォッチの防水等級はおおむね『常温・静止・淡水』という限定された条件で測られている、という点です。5ATMは水泳や雨、手洗い程度の水しぶきを想定した規格で、お風呂・温泉・サウナのように高温だったり、石鹸・入浴剤・塩分といった化学的な負荷がかかる環境は、多くの場合そもそも試験の前提から外れています。
実際、Apple・Garmin・Samsungといった主要メーカーは、サウナや熱い湯、石鹸やシャンプーへの接触を避けるよう案内しています(表現や条件はメーカー・機種で異なります)。つまり『等級があるから大丈夫』ではなく、『等級が想定していない使い方をすれば、壊れても不思議ではない』のが実情です。
そして重要なのが、この状況では故障時の主張が弱くなりやすいこと。防水等級が保証しているのは規格どおりの条件下での性能であって、温泉やサウナでの使用は保証範囲外とされることが多く、『防水なのに壊れた』が通りにくいのです。まずはこの前提を共有したうえで、以下で仕組みを掘り下げます。
5ATMとIP68は、どちらも『水に強い』ことを示す表記ですが、測っているものが違います。5ATM(5気圧)は水圧に対する耐性で、おおむね水深50mに相当する圧力に耐える設計、というのが一般的な説明です。時計向けのISO 22810という規格に基づくことが多く、この規格は水圧・浅い水深・操作部への負荷・温度差(熱衝撃)といった要素を含むとされ、水泳など動きのある水中利用まで視野に入れているとされます。
一方でIP68は、防塵・防水の等級コード(IEC 60529系)で、末尾の『8』は一定の水深・時間の水没に耐えることを示します。ただしIPの試験は基本的に『静止した淡水』での水没が前提とされ、泳ぐときのような水流・水圧の変化までは想定していない、という解説が多く見られます。
ざっくり整理すると、雨・手洗い・汗程度ならIP68でも5ATMでも概ね対応、水泳まで視野に入れるなら5ATM(またはそれ以上)が一つの目安、という理解が無難です。ただし数字はあくまでメーカーの試験条件下の話で、実使用の水流・温度・化学物質までカバーするものではない点は、両者に共通する限界です。
防水等級の試験は、条件をそろえて再現性を確保するため、多くが常温に近い温度・静止した状態・真水(淡水)で行われるとされています。裏を返すと、この3条件のどれかが大きく崩れる環境は、等級が保証している範囲の外側になりやすい、ということです。
お風呂・温泉・サウナは、この3条件をまとめて外しにきます。まず温度。試験は室温付近が前提とされるのに対し、お湯は40℃前後、サウナに至っては数十℃から100℃近くにも達することがあります。次に水質。温泉の塩分・硫黄、入浴剤や石鹸・シャンプーは、真水とはまったく別の化学的環境です。さらにシャワーの水流やジェットバスの噴流は、静止とは真逆の負荷になります。
要するに、お風呂・温泉・サウナは『高温』『非淡水(化学物質)』『動的な水流』という、防水試験がわざわざ避けている条件を同時に踏むわけです。だから等級の数字が大きくても、この用途では素直に安心できない——これが、多くのメーカーが個別に注意書きを添える背景だと考えられます。
主要メーカーの案内を見ると、防水等級とは別に細かな使用条件が付いていることが分かります。たとえばApple(公式サポート)は、石鹸・シャンプー・コンディショナー・香水・日焼け止め・ローション・溶剤・洗剤などへの接触を避けるよう案内し、これらは水への耐性(防水性能)に影響しうるとしています。もし付着した場合は真水ですすいで、糸くずの出ない布で拭くよう勧めています(表現は変わる可能性があるため最新の公式案内を確認してください)。
温度についても、Garminは多くの機種で動作温度の上限をおおむね45℃程度としており、はるかに高温になるサウナは範囲を大きく超えるため、サウナや熱い湯船では装着を避けるよう案内しています。熱でシールのOリング(パッキン)が膨張・変形して防水性が損なわれる、電池が劣化する、AMOLED画面の接着に影響しうる、といった説明が見られます。
こうした条件は機種・世代・メーカーで細部が異なり、同じ『5ATM』でもお風呂に関する扱いが違うことがあります。だからこそ、『等級』ではなく『あなたの機種の取扱説明書・公式サポートの但し書き』を最終的な根拠にするのが安全です。
防水性能は『一度買えば永久』ではなく、時間とともに落ちていく性能だ、というのが時計全般に共通する考え方です。防水を担っているのはゴムやシリコンのパッキン(ガスケット)で、これは経年で弾力を失い、乾いて硬化したりひび割れたりします。熱・塩分・塩素・日焼け止めなどの化学物質は、この劣化を早めるとされています。
温泉の塩分・硫黄、海水の塩分、プールの塩素は、まさにこの『劣化を早める側』の代表格です。さらに温度が高ければ、パッキンの膨張・収縮が繰り返されてシールの密着が甘くなりやすい。つまり温泉や海・プールでの使用は、たとえその日は無事でも、防水性能をじわじわ削っている可能性がある、という見方ができます。
対策として広く言われるのは、塩分・塩素・化学物質に触れたあとは真水で軽くすすいで乾かすこと。これで直ちに新品同様に戻るわけではありませんが、シールの寿命を延ばす方向には働くとされています。数値で寿命を断定はできませんが、『水回りで使うほど、防水は前倒しで消耗する』という前提で付き合うのが現実的です。
うっかり深く水没させた、あるいは想定外の環境(熱い湯・入浴剤入り)で使ってしまった——そんなときに慌てて熱で乾かすのは逆効果になりがちです。ドライヤーの熱風やサウナ・ストーブでの乾燥は、急な温度変化でシールを痛め、かえって防水性を損なうおそれがあります。基本は、真水でやさしくすすぎ、糸くずの出ない布で拭き、自然乾燥させるのが無難です。
スピーカー内部に水が残ると音がこもることがあります。多くの機種には、内部の水を音の振動で押し出す機能が用意されています。Apple Watchなら『Water Lock(水ロック)』を使い、上がったあとにDigital Crownを長押しすると音とともに水が排出されます。Samsung Galaxy Watchにも水を排出する機能があるとされます(名称・操作は世代で異なるため、お使いの機種の案内で確認してください)。
水泳など水中で使うときは、この水ロック系の機能をあらかじめオンにしておくと、水中での誤操作も防げます。ただしこれは『水を抜く/誤操作を防ぐ』機能であって、『どんな水でも壊れない』を保証するものではありません。あくまで、想定内の使い方をしたうえでの後始末ツール、と捉えるのが正確です。
それでも『できるだけ水回りで使いたい』なら、等級の数字だけで選ばず、いくつかの軸を重ねて見るのが安全です。第一に防水等級。水泳まで考えるなら5ATM(以上)を最低ラインの目安にしつつ、公式が水泳可と明記しているかを確認します。IP表記しかない機種は、水没には強くても動的な水中利用は想定外のことがある、と理解しておきます。
第二に、水抜き機能(水ロック/水排出)の有無。水中利用を公式に想定している機種ほど、この機能が備わっている傾向があります。第三にバンドの素材。塩素・塩分・皮脂に強いのはシリコンやフッ素系ラバー系で、金属バンドや革バンドは水回りでの劣化・変色が起きやすいとされます。バンドは交換できる機種を選ぶと、消耗品として割り切れて安心です。
そして意外と効くのが第四の軸、保証・サポートの手厚さです。水回りでの使用は防水保証の対象外とされることが多いので、そもそも故障時に相談しやすいメーカーか、有償でも修理・バッテリー交換の窓口が整っているかは、長く使ううえで実利があります。『壊れない機種』を探すより、『壊れたときに困りにくい機種』を選ぶ、という発想も持っておきたいところです。
通販の格安スマートウォッチでは、商品ページに『IP68』『5ATM』『完全防水』などと大きく書かれていても、実際の作り込みが伴わないケースが指摘されています。パッキンの精度やボタンまわりの処理が甘ければ、表記どおりの防水は期待しにくく、『防水と書いてあったのに浸水した』というトラブルの温床になります。そもそも『完全防水』という表現自体、正確ではないことが多い点も覚えておきたいところです。
こうした表記の信頼性を見抜く一助になるのが、レビューの質の見極めです。極端な高評価が短期間に集中している、日本語が不自然、写真がメーカー画像の使い回しばかり——といった構造的なシグナルは、レビューの信頼度を疑う手がかりになります。良品チェッカーのサクラ判定ツール(トップページ /)は、商品URLを貼るとこうした構造シグナルからサクラ度の目安を示します。ただし断定的な精度を保証するものではなく、あくまで一次スクリーニングとして使うのが適切です。
そのうえで、実際に選ぶ段では、レビュー操作の影響を除いて絞り込んだスマートウォッチのサクラなし厳選ランキング(/ranking/smartwatch)も併せて活用してください。防水等級・水抜き機能・保証といったこの記事の選定軸と、レビューの信頼度チェックを組み合わせれば、『防水詐称』の格安機を避けやすくなります。なお防水の最終的な可否は、購入前に必ず自分の機種の公式案内で確認してください。